執行猶予とは?

皆さんも刑事事件のニュースなどで、「懲役3年、執行猶予4年の判決が言い渡されました」などと聞いたことがあると思います。

執行猶予とは、有罪判決に基づく刑の執行を一定の期間(3年~5年)猶予し、その間に罪を犯さなければ刑罰権を消滅させる制度のことです。

上記の「懲役3年、執行猶予4年の判決」の場合、最初から刑務所に行って懲役刑に服さなければならないわけではなく、社会で4年間平穏無事に(新たな罪を犯さずに)過ごした場合には、刑務所(懲役3年)に行かなくて済む、ということです。

どのような場合に執行猶予付きの判決をもらうことができるのか?

執行猶予をつけるかどうかは、判決を言い渡す裁判官が、犯罪の軽重や態様、被害の程度や被害回復の有無、被害者の処罰感情、反省の程度等の一切の事情を考慮して決めます。

しかしながら、そもそも、執行猶予をつけるための条件というのが法律上決められており、以下の条件に当てはまらない場合には、裁判官がどんなに執行猶予をつけてあげたいと思っていたとしても、執行猶予をつけることはできません。

①今回言い渡される刑罰が「3年以下の懲役もしくは禁錮」か「50万円以下の罰金」であること
かつ
以前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、あるいは禁錮以上の刑に処せられたことがあったとしてもその執行を終わった日またはその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと

②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、その刑の全部の執行を猶予されたこと
かつ
今回言い渡される判決が「1年以下の懲役または禁錮」であること
かつ
情状に特に酌量すべきものがあること
(②は「再度の執行猶予」と呼ばれているものです)
 
※ここでは、刑法25条の「刑の全部の執行猶予」を挙げています。

執行猶予を獲得する方法とは?

執行猶予のついていない有罪判決(例:「懲役3年」)が言い渡された場合には、そのまま刑務所に収容され、3年間の懲役刑に服することになりますが、執行猶予付きの有罪判決(例:「懲役3年、執行猶予4年」)であれば、判決が言い渡されたその日に釈放され、自宅に戻って、これまでと変わらない社会生活を送ることができます。

このように、執行猶予がつくかどうかによって、その後の本人の生活は180度変わってしまいます。できれば誰もが執行猶予付きの判決を望むところですが、どのようにすれば執行猶予を獲得することができるのでしょうか?

ここでは、法律上、執行猶予がつけられる条件は満たしているものとしてお話します。

先に述べたように、執行猶予をつけるかどうかは、判決を言い渡す裁判官が、犯罪の軽重や態様、被害の程度や被害回復の有無、被害者の処罰感情、反省の程度等の一切の事情を考慮して決めています。

そこで、裁判の場で、これらの執行猶予をつけてもらいやすくなる要素を、なるべく多く主張・立証していくことになります。

・犯罪の軽重・態様
→犯してしまったのが軽微な犯罪であれば、執行猶予がつきやすくなります。

また、犯罪行為の悪質性・常習性・残虐性が少なければ、執行猶予がつきやすくなります。

・被害の程度・被害回復の有無
→犯罪行為の結果として被害者に生じた被害(身体的被害・財産的被害)が少ないほど、執行猶予がつきやすくなります。

また、示談を通じて被害回復(被害弁償)がなされているのであれば、執行猶予がつきやすくなります。

・被害者の処罰感情
→上記と重なる部分もありますが、被害弁償のうえ示談が成立し、被害者が犯人の行為を宥恕(許す)しているのであれば、執行猶予がつきやすくなります。

・反省の程度
→犯罪となる事実行為を素直に認めて、真摯な反省の言葉を口にしているなど、反省の態度が顕著であれば、執行猶予がつきやすくなります。

・再犯可能性の有無
→親族等による適切な監督が期待できる、二度と同じ犯罪をしないための具体的方策がとられている等の事情により、再犯可能性がないといえれば、執行猶予がつきやすくなります。

・社会内での更生可能性
→戻って生活できる自宅がある、社会復帰後の仕事が決まっている等の事情により、社会内での更生が十分に期待できるのであれば、執行猶予がつきやすくなります。

・前科の有無
→前科がない、前科があったとしても前刑からだいぶ時間が経ってからの犯行である等の事情があれば、執行猶予がつきやすくなります。

・その他有利となり得る事情
→養育・介護を必要とする家族がいて、本人以外にそれらの者の面倒を看る者がいない、本人が高齢・病気などのため服役に耐えられない等の事情があれば、執行猶予がつきやすくなります。

これらは、執行猶予を獲得するために役立ちそうな事情の一例にすぎません。

実際には、事案ごとに主張・立証すべき事情は異なります。適切な主張・立証を行い、執行猶予を獲得するためには、経験豊富な弁護士の関与が不可欠です。

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