代表取締役は、会社という法人とは別個の存在である「個人」ですので、会社が破産したとしても代表取締役である社長名義の個人資産には何ら影響しないのが原則です。

しかし、会社の債務、とくに銀行関係の債務については社長が個人保証をしていることが多く、この場合は、会社が破産すれば社長個人が代わって返済しなければなりません。

また、同じく銀行関係の債務については、社長が自宅に抵当権を設定している場合が多く、この場合も、会社が破産すれば、自宅は担保権の実行として競売にかけられ、最終的には、自宅を手放さなければならないことになります。

このように、社長が個人保証をしている、担保権を設定しているという場合は、社長個人の資産はなくなってしまいますし、また、通常は、社長個人の資産をすべて手放しても返済しきれないことが多いので、会社とともに社長個人も破産するというケースが多いのが実際です。

もっとも、社長の個人資産のうち、いわゆる「自由財産」に当たるものについては、社長が破産をしたとしても、裁判所に申立をして許可を受ければ、処分されずに手元に残すことができる場合があります。

例えば、①預貯金・積立金、②保険解約返戻金、③自動車、④敷金・保証金返還請求権、⑤退職金債権、電話加入権については、現金も含めて総額99万円の範囲内であれば、裁判所に申立てをした上で保有することが認められる可能性があります。

また、社長個人の自宅を、親族の方が適正な価格で買うことも可能ですので、このような場合は、破産管財人に相談してみることも有益です。

さらに、ケースとしては少ないですが、社長にマンション、土地などの個人資産があり、個人保証をしている、あるいは抵当権を設定している会社の債務について、すべて支払うことができるという場合は、会社のみ破産し、社長は通常の生活を続けるという場合もあります。

なお、社長以外の親族の方(社長の父母、妻子など)の資産は、個人保証をしている、抵当権を設定しているという場合以外は、会社が破産しても、会社の債務を支払う義務はありませんから、会社の破産とは関係なしに、資産を保有し続けることができます。

ちなみに、上記のとおり、社長以外の資産であれば会社が破産しても影響を受けないということから、会社が破産する前に、会社の財産を妻や子に移転しようとする方がいますが、このような行為は財産隠しであり、後に、破産管財人から、財産移転行為を否認され、移転した財産の返還を求められます。

また、財産隠しは犯罪であり、詐欺破産罪という犯罪行為として、破産管財人から刑事告訴されたりします。したがって、このような行為は行うべきではありません。

法人破産・会社整理の専門サイト

下記の「法人破産・会社整理」の専門サイトもご覧ください。

会社整理破産専門サイト


法人破産に関するQ&A一覧

No Q&A
1 毎日資金繰りに追われ、夜も眠れません。会社を整理するしかないと思っていますが、どのようにすればよいのでしょうか。
2 破産をするかどうかどうしても決断がつきません。
3 弁護士に破産手続きを依頼した場合、弁護士はどのようなことを行うのですか。また、弁護士に依頼した場合のメリットはどのようなものでしょうか。
4 会社が破産した場合、私が個人で持っている自宅、預貯金、その他の資産はどのようになるのでしょうか。妻が持っている資産についてはどうでしょうか。また、私個人も破産する必要があるのでしょうか。
5 破産手続きをしている間は、他に仕事をすることができないのでしょうか
6 破産をした場合、取引先が会社に押し掛けてくるようなことはないのでしょうか。この場合どうしたらよいでしょうか。取引先が納品した品物が会社内にある場合の対応、リース会社に対する対応などについても教えてください
7 破産をすれば、従業員は解雇せざるを得ないと思いますが、従業員にはどのように対処したらよいでしょうか。未払い給与、解雇予告手当の支払い、社会保険関係の処理について教えてください。また、従業員の私物はどうしたらよいでしょうか
8 労働者健康福祉機構というところが、未払い給与などの立替払いをしてくれるとのことですが、詳しい内容について教えてください
9 破産をすると、どのように手続きが進むことになるのでしょうか。また、破産手続きが終了するまでどの位の時間がかかりますか。(A.裁判手続が開始する前)
10 破産をすると、どのように手続きが進むことになるのでしょうか。また、破産手続きが終了するまでどの位の時間がかかりますか。(B.裁判手続が開始した後)
11 会社が破産する場合、取引先には迷惑をかけたくないので、事前に話をしておきたいのですが。
  また、支払いをしないと倒産しかねない取引先があり、ここには支払いしたいのですが、どうでしょうか
12 会社には、機械類、在庫、土地建物などの資産がありますが、会社が破産をした場合、これらはどうなるのでしょうか。会社の機械類を使って、新たに商売をしたいのですが、このようなことは可能でしょうか。
  また、土地建物について、買いたいという人がいるので売ってしまってよいでしょうか。売却価格が適正なら問題がないでしょうか。
13 会社が破産した場合、会社が賃貸していた建物はどうなるでしょうか。反対に、会社が賃借していた建物はどうなるでしょうか。この他に、敷金・保証金の扱い、借地権についても教えてください。
14 破産をした場合、支払い未了の商品、取引先から預かっていた金型、リース物件、ローン返済中の自動車はどうなるでしょうか
15 破産のために必要な費用としてどのようなものがあるでしょうか。この費用はどのようにして用意したらよいでしょうか
16 取引先Aから、Aが当社に持っている債権について、当社が他社に持っている売掛金を担保に入れるように言われています(債権譲渡担保)。担保に入れることに問題があるでしょうか。会社の売掛金を担保に入れて、新規に融資を受ける場合はどうでしょうか。
また、昨今の不況で業績は悪化し、負債もかなり膨らんでいます。息子が同じ事業を継ぎたいと言ってくれたため、何とか息子のために事業を残したいと考え、息子が代表となる別の新会社に対し、私が経営する会社の事業設備を贈与したり、新会社が負担すべき債務を肩代わりして弁済したいと思っていますが、大丈夫でしょうか
17 破産をした場合、いろいろ制限があり、郵便物が破産管財人のところに行ったり、旅行をするにも許可が必要ということ聞きました。また、就職するにも制限があるようですが、制限の内容はどのようなものでしょうか。取締役にはなれるのでしょうか
18 会社が破産することになりましたが、会社のいくつかの事業の中で、利益をあげている部門があるので、社員のためにも、この事業だけは継続したいと思っています。このようなことは可能でしょうか
19 会社が破産する場合、係争中の訴訟はどうなりますか。法人税や消費税の申告をする必要はあるでしょうか。財産を隠したり、虚偽の報告をするとどうなりますか
20 法人破産をした具体例について知りたいのですが、事例があったら教えてもらいないでしょうか