① 事前に話をすることについて
会社が破産を申し立てる場合、そのことは、取引先はもちろん、従業員など社内の人間には対しても、厳に秘密にしておく必要があります。
借り入れをしている銀行に対しても同じです。
破産申立をする旨を打ち明けるのは、秘密を厳守することができるごく一部の人だけになります。
主に経理担当者、取締役などです。
というのも、もし破産申し立てをするということが明らかになってしまえば、取引先は自分が納品した品物を取り戻しに来たり、売掛金を一刻も早く回収しようとします。
また従業員は、今後どうなるのか、給料はどうなるのかと社長に詰め寄るでしょう。
本社、工場などの現場は大混乱になってしまいます。
また、会社の売掛先は、売掛金を支払ってくれなくなるかもしれません。
銀行は、預金の払い戻しをストップしてしまいます。
このようなことになったのでは、破産申立ての準備ができないのはもちろん、裁判所に対する予納金、弁護士費用の支払いもできなくなり、破産の申立を諦めざるを得ないことになります。
信頼できると思っていた取引先の社長に対し、破産申立てをするかどうかを含め、今後の会社の方向性について相談したところ、その取引先がこのことをしゃべってしまい、それが広まって大混乱になったということもありますから注意が必要です。
これまで世話になってきた取引先に対し、何の話をすることもなくいきなり破産するというのは気が引けるかもしれませんが、裁判所で破産開始決定が出て、破産管財人が付いたのちに、上記のような理由から、あらかじめ話ができなかったことをお詫びするということでよいと思います。
② 一部取引先に支払いをすることについて
また、支払いをしないと倒産しかねない取引先があり、ここには支払いしたいとのですが、債権者の一部にだけ支払いをすることは偏波弁済と言って、法律上禁じられています。
このよう支払いは、債権者間の平等を害する行為で、特定の債権者だけが利益を得ることになるからです。
それにもかかわらず、一部の取引先にだけ支払いをした場合、破産管財人はこの支払いを否認し、支払いを受けた取引先は、そのお金を破産管財人に返還しなければならないことになります。
任意に返還をしない場合は、破産管財人がこの取引先を相手にして、お金の返還を求める訴訟を起こします。
連鎖倒産を回避するための制度としては、①中小企業倒産防止共済制度の利用(中小企業倒産防止共済に加入していれば、無利子・無担保での貸付を受けることが可能)、②セーフティネット保証(信用保証協会の保証枠を拡張することで、融資を受けやすくする)、③セーフティネット貸付(中小企業金融公庫等が、取引先の倒産により資金繰りが悪化している中小企業に対し、経営の安定化を図るために融資を行う)などがあります。
また、④全国の主な商工会議所、都道府県商工会連合会には、経営安定(倒産防止)特別相談室が設置されており、緊急経営安定対応貸付制度などの特別な貸付制度がありますので、取引先には、このような制度を利用してもらうしかありません。
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