会社が破産した場合、破産管財人が会社の資産を売却して、それを債権者に配当し、最終的に会社は消滅するのですから、破産した会社が、一部の事業だけをずっと継続していくということはもちろんできません。
ただ、利益をあげている事業を他の会社に売却することにより、他の会社の一部門となって事業を継続していくことは可能です。
具体的に言うと、破産管財人が、裁判所の許可を得て、破産した会社の事業を継続し(破産法36条)、その後、他の会社に、利益をあげている部門を譲渡することにより、この部門の事業を継続するということになります(破産法78条2項3号)。
この場合、通常であれば必要とされる株主総会決議などの手続は不要とされていますし、民事再生手続きのように債権者の意見を聴く手続なども無いので、迅速に事業の継続がなされるメリットがあります。
ただ、破産手続をとることで、仕入先や得意先、従業員などが離れてしまうこともあることから、早期に事業の継続を実現する必要があります。
そのため、手続申立前の段階から、事業の譲渡先の選定や譲渡代金等について、十分な検討と準備を行い、合理的かつ迅速な事業譲渡を目指す必要があります。
また、破産管財人は、破産財団の最大化を目指す必要があるので、譲渡代金は適正なものでなければなりません。
破産する前に(つまり、裁判所が関与する前に)利益をあげている事業を譲渡することもできますが、経済的に苦しくなり、破産を考えなければならないという状態では、事業の買い手を探し、適正な価格で、法律に定められた手続で売却するということは、実際上難しいでしょう。
また、無償あるいは不当に低い価格で事業を譲渡してしまうのはもちろん違法です。
例えば、自分が経営している他の会社に、利益が出ている事業を無償で譲渡してしまうというようなことをすると、後に破産になった後に破産管財人から譲渡を否認されたり、財産隠しとして、詐欺破産罪という罪に問われることになります。
また、社長個人も破産している場合、社長の免責(破産したことによって債務を返済しなくてもよくなること)が認められなくなる可能性も大です。
なお、通常の会社破産の場合は、「会社全体としては破産せざるを得ないが、一部の事業では利益が上がっているので、事業譲渡を考える」というケースは、ほとんどないのが実情です。
いずれにしても、破産手続における事業譲渡は、事業を買ってくれる会社の発見、仕入先や得意先、従業員の確保、妥当な価格の算定など、困難を伴うことが多くあります。
破産管財人の役割ももちろん重要ですが、会社の経営が苦しくなったときは、会社破産の処理に経験豊富な弁護士によくご相談されることが大切です。
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