① 債権譲渡担保の設定について

A社から、貴社の売掛金を担保に入れるように言われているとのことですが、すでに貴社が経済的に苦境にあり、支払不能になる前30日以内に債権譲渡担保の設定がされたときは、後に破産開始決定になった後、破産管財人から、この担保設定が否認されることがあります。

経済的に苦境にある状態で、売掛金に債権譲渡担保の設定をしている点が、担保設定を受けて優先的回収を受けられる取引先Aと他の債権者との間で不公平が発生すると評価されるからです。

だた、破産法上、否認権行使の対象となる担保設定行為は、すでにある債務についてなされたものに限定されているため、新規に融資を受けるためになされた債権譲渡担保の設定は破産管財人の否認権の対象とはなりません。

② 事業設備の譲渡、負債の肩代わりについて

会社の事業設備を息子の新会社に贈与したり、新会社が負担すべき債務を肩代わりして弁済するのは、会社の財産を減少させる行為であり、会社に対する他の債権者を害する行為です。また、受益者である息子の会社は、親の会社の経営状況などは当然把握しているはずで、この贈与によって、他の債権者が害されることは認識していたはずです。

さらに、今回の場合は、設備などの譲渡、負債の肩代わりは無償でされていますから、破産法でいう無償否認となると考えられます。

以上の点からすると、設備譲渡、負債の肩代わりは詐害行為と判断され、後に破産になった場合、破産管財人から否認され、息子の会社は、財産の返還を求められる可能性が非常に高いと言えます。

息子の新会社に事業設備を譲渡するのであれば、適正な価格で、息子の会社と売買契約を行い、その価格を受け取るということでなければなりません。

事業設備の手続な価格を出すのはなかなか難しいと思いますが、税理士などの方に算定してもらうのも一つの方法かと思います。

ただ、売買契約をした場合でも、後になって、破産管財人からその価格が適正なものではないと判断された場合は、やはり事業設備の譲渡を否認されることにもなりかねません。

したがって、このような行為は一般的に言って妥当とは言えず、他の債権者からも疑惑の目で見られてしまいます。

どうしてもということであれば、破産開始決定後、新会社が破産管財人から買い取るというのが、一番公平で、他の債権者も納得するということになります。

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