従業員は事態を察知していることも多いと思われますが、突然のことにショックを受け、破産申立の準備が混乱することも考えられます。
そのため、弁護士は、事業をストップする日に代表者と共に事業所に行き、破産申立てに至った理由を説明し、混乱が生じるのを未然に防止し、在庫などの資産や帳簿類の保全への協力、さらに破産管財人への協力を要請することが必要となります。
また、従業員の一番の関心事は未払い給与の支払い、健康保険の切り替え、年金の処理、失業保険の受給ですから、これらの取り扱いについても、きちんと説明すべきです。
また、従業員を解雇する場合の解雇予告手当ですが、破産申立てを理由に従業員を即時解雇した場合、法律上は、解雇予告手当(30日分の平均賃金)を支払う必要があります。
未払い給与、解雇予告手当について、社会保険労務士、経理担当者の協力を得て金額を計算することができ、また、支払いをする資金があるなら、破産申立前にこれらの支払いをすることも考えられますが、破産管財人に委ねざるを得ない場合も多いと思います。
会社が社会保険に加入している場合、会社が破産の申立をして、社会保険事務所に廃業の手続をすると、健康保険証は使用できなくなります。
そのため、社会保険の任意継続手続(2年間に限り保険給付を受けられます)や国民健康保険への切替えの手続を行うことになります。
厚生年金の記録は残っていますので、厚生年金加入期間に応じた年金を受給することができます。会社負担部分に滞納があっても、厚生年金から会社が脱退していない限り、従業員の方の加入記録に影響はありません。
ただし、会社の方は、年金の支払い義務を免れるわけではありません。厚生年金の滞納保険料は財団債権にあたりますので、破産手続の中で優先的に支払われることになります。
また、失業給付を受けるための離職票、年末調整や確定申告で必要な源泉徴収票などを従業員に渡す必要があります。
なお、従業員に対してではありませんが、市役所などの役場に対して給与所得者異動届、年金事務所に対する「資格喪失届」なども提出する必要があります。
労働の対価としての給与は、破産手続開始前3ヶ月間のものは「財団債権」とされ、支払が可能となれば破産管財人から支払いがされます。
破産財団に十分な支払い原資がなく、支払いができない場合は、「労働者健康福祉機構」による立替払という制度があります。
会社が所在していた建物は、賃貸借の場合には賃貸借契約の解約により、所有建物の場合でも破産管財人が売却処分すること等により、明け渡しが求められることになります。
したがって、私物もやがて片づけなければならなくなりますので、従業員には私物の引き取りを求めることになります。
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