会社が破産申立てをし、裁判所で破産手続開始決定が出されると、それと同時に、破産管財人が選任され、破産管財人が、会社名義の資産を管理、処分する権限を有することになります。

その後、破産管財人が、その資産を売却することで、債権者の配当の引き当てとなる財産を形成し、配当を行うことができるよう努めることになります。

つまり、破産管財人が、会社の機械類、在庫、土地建物などを売却しお金に変えて、債権者に配当することになります。

破産申立てを弁護士に依頼した以降は、会社名義の預貯金だけでなく、すべての会社資産の管理を弁護士に一任してください。

納期の関係、生鮮食料品など、処分時期が限定される場合などであれば適正価格で売却することも可能ですが、原則、そのまま保管をして破産管財人に引き継ぐことになります。

次に、破産申立てをする会社の社長が、会社の機械類について自分が引き継ぎ、新たに自分で行う事業のために使うということは可能でしょうか。

このような場合、機械類を勝手に持っていくことができないことはもちろんですが、破産管財人から、適正な価格で、売買によって機械類を買い取ることは可能です。

もちろん、他に、より高い価格で買い取る人がいれば機械類を取得することはできないので、一番高い価格を付けることが必要です。

ただ、多くの場合、機械類を売買によって買い取ってくれる人は少なく、逆に、機械を処分するために、処分業者に処分料を支払わなければならない場合がほとんどです。

したがって、比較的安い値段、あるいはただであっても、機械類を持っていってくれるということであれば、破産管財人はそれを承諾することが多いと思います。

さらに、土地建物を自ら売却するという点ですが、債務超過になっている状況で、例えば、3000万円相当の土地建物を1000万円で売却する場合は、会社の財産を減少させ、債権者への配当の原資となる財産を減らす行為となるために、問題となります。

このような行為を会社が行った場合、破産管財人には、この売買の効力を失わせ、土地建物を取り戻す権利が認められています。破産管財人のこの権利を否認権といいます。

それでは、適正な価格で売却した場合どうでしょうか。この場合は、原則として否認権の対象にはなりません。

ただし、会社(破産者)が、自己の財産の売却により得た金銭について、隠匿、無償の供与その他の破産債権者を害する処分する意思を有しており、その購入者がそのような破産者の意思を知っていた場合には、否認権行使の対象となります(破産法161条1項)。

法人破産・会社整理の専門サイト

下記の「法人破産・会社整理」の専門サイトもご覧ください。

会社整理破産専門サイト


法人破産に関するQ&A一覧

No Q&A
1 毎日資金繰りに追われ、夜も眠れません。会社を整理するしかないと思っていますが、どのようにすればよいのでしょうか。
2 破産をするかどうかどうしても決断がつきません。
3 弁護士に破産手続きを依頼した場合、弁護士はどのようなことを行うのですか。また、弁護士に依頼した場合のメリットはどのようなものでしょうか。
4 会社が破産した場合、私が個人で持っている自宅、預貯金、その他の資産はどのようになるのでしょうか。妻が持っている資産についてはどうでしょうか。また、私個人も破産する必要があるのでしょうか。
5 破産手続きをしている間は、他に仕事をすることができないのでしょうか
6 破産をした場合、取引先が会社に押し掛けてくるようなことはないのでしょうか。この場合どうしたらよいでしょうか。取引先が納品した品物が会社内にある場合の対応、リース会社に対する対応などについても教えてください
7 破産をすれば、従業員は解雇せざるを得ないと思いますが、従業員にはどのように対処したらよいでしょうか。未払い給与、解雇予告手当の支払い、社会保険関係の処理について教えてください。また、従業員の私物はどうしたらよいでしょうか
8 労働者健康福祉機構というところが、未払い給与などの立替払いをしてくれるとのことですが、詳しい内容について教えてください
9 破産をすると、どのように手続きが進むことになるのでしょうか。また、破産手続きが終了するまでどの位の時間がかかりますか。(A.裁判手続が開始する前)
10 破産をすると、どのように手続きが進むことになるのでしょうか。また、破産手続きが終了するまでどの位の時間がかかりますか。(B.裁判手続が開始した後)
11 会社が破産する場合、取引先には迷惑をかけたくないので、事前に話をしておきたいのですが。
  また、支払いをしないと倒産しかねない取引先があり、ここには支払いしたいのですが、どうでしょうか
12 会社には、機械類、在庫、土地建物などの資産がありますが、会社が破産をした場合、これらはどうなるのでしょうか。会社の機械類を使って、新たに商売をしたいのですが、このようなことは可能でしょうか。
  また、土地建物について、買いたいという人がいるので売ってしまってよいでしょうか。売却価格が適正なら問題がないでしょうか。
13 会社が破産した場合、会社が賃貸していた建物はどうなるでしょうか。反対に、会社が賃借していた建物はどうなるでしょうか。この他に、敷金・保証金の扱い、借地権についても教えてください。
14 破産をした場合、支払い未了の商品、取引先から預かっていた金型、リース物件、ローン返済中の自動車はどうなるでしょうか
15 破産のために必要な費用としてどのようなものがあるでしょうか。この費用はどのようにして用意したらよいでしょうか
16 取引先Aから、Aが当社に持っている債権について、当社が他社に持っている売掛金を担保に入れるように言われています(債権譲渡担保)。担保に入れることに問題があるでしょうか。会社の売掛金を担保に入れて、新規に融資を受ける場合はどうでしょうか。
また、昨今の不況で業績は悪化し、負債もかなり膨らんでいます。息子が同じ事業を継ぎたいと言ってくれたため、何とか息子のために事業を残したいと考え、息子が代表となる別の新会社に対し、私が経営する会社の事業設備を贈与したり、新会社が負担すべき債務を肩代わりして弁済したいと思っていますが、大丈夫でしょうか
17 破産をした場合、いろいろ制限があり、郵便物が破産管財人のところに行ったり、旅行をするにも許可が必要ということ聞きました。また、就職するにも制限があるようですが、制限の内容はどのようなものでしょうか。取締役にはなれるのでしょうか
18 会社が破産することになりましたが、会社のいくつかの事業の中で、利益をあげている部門があるので、社員のためにも、この事業だけは継続したいと思っています。このようなことは可能でしょうか
19 会社が破産する場合、係争中の訴訟はどうなりますか。法人税や消費税の申告をする必要はあるでしょうか。財産を隠したり、虚偽の報告をするとどうなりますか
20 法人破産をした具体例について知りたいのですが、事例があったら教えてもらいないでしょうか